処方名当帰芍薬散処方名

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  主治(Mainly treatment)
肝鬱脾虚(月経困難症)  
  【中国主治】(Chinese Mainly treatment)
一、妊娠腹中疼痛及婦人少腹諸痛。 二、腹中拘急綿綿作痛,按之痛減、頭眩、小便不利、足?浮腫、舌淡紅、苔白膩,脈濡細緩。 三、養血安胎,用於?前?後之補養或妊娠腹痛,或習慣流?者。  
  【適応症】自律神経失調症、更年期症候群(頭重、頭痛、めまい、肩こり等)、貧血、月経不順、浮腫、慢性腎炎、習慣性流産、妊娠浮腫、月経困難、不妊症、動悸、脚気、半身不随、心臓弁膜症、心臓衰弱、腎臓病、産前産後あるいは流産による貧血症、痔核、脱肛、つわり、月経痛、更年期神経痛、にきび、しみ、血圧異常、耳鳴り、ヒステリー、妊娠腎、帯下、冷え症、腰痛、坐骨神経痛、各種婦人科疾患の補助療法、産前産後あるいは流産による障害時の疲労倦怠、回復促進、足腰の冷え症、しもやけ、子宮内膜炎、流産予防、妊娠中毒症の予防、妊娠腎、萎縮腎、肝斑、湿疹、パセドー氏病、不整脈、高血圧、低血圧、婦人血の道症。  
  【中国臨床應用】(Mainly treatment)
妊娠腹痛、更期綜合症、盆腔炎、不孕症、卵??腫、習慣性流?、妊娠?氣、慢性腎炎、高血壓、低血壓、前列腺肥大、慢性闌尾炎、慢性肝炎、膽?炎、K斑、帶下。  
 
中医師 漢方・中医学(Traditional Chinese Medicine)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb) »を処方した漢方薬を使う」ことです。
生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液(blood)」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス良く循環することが大切だと考えます。
人間の健康は、これら「気」(陽)「血・津液」(陰)の調和(harmony)のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和(陰平陽秘)していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。
黄帝:三皇五帝時代。夏王朝の始祖。宮廷医師、岐伯との問答形式で記された古典的医学書「内経 »素問」の著者です。日本ではユンケル「ユンケル黄帝液」などと商品名に利用されています。
 
  弁証論治 ●血虚 »
●気虚血瘀 »
●肝鬱脾虚 »
 
  【中国辨證】(Dialectic)
(1)妊娠或男、婦少腹疼痛喜按。 (2)頭眩、面色蒼白。 (3)小便不利。 (4)苔白膩。 (5)脈濡緩。  
区切り
  薬は効果(ベネフィット)のみだけでなく副作用(リスク)の可能性もあります。リスクをなるべく抑え、ベネフィットを最大限に引き出すことが大切なのです。薬を使用される方の理解と協力が大いに必要です。
【副作用】(ill effects)
極まれに発疹(ほっしん)、胃部不快感や便秘などがあり、そのときは処方を変更します。
 
  【注 意】(Remark) ×残念ながら、胃腸がとても弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい方は、禁忌(きんき)(服用を避ける)です。
 
  【妊娠・授乳の注意】女性 ●安産の薬です。安胎薬として、妊娠時にもよく用いられます。
●切迫、流・早産の下腹部痛の場合に使用されます。
●妊娠中の貧血の場合によく使用されます。
 
 
区切り
  証の判定 判定

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中医学の証の解説中医学の証の解説

  中医学(漢方)の治療目的は病邪を取り除き、病因を消し去り、陰陽陰陽(positive and negative principles)のバランス(balance)の乱れを正し、相関する臓腑の生理機能を調和・回復させることです。 中医師 中医学(漢方)の特徴は、身体全体を診るということです。 身体全体の調子(バランス)を整え、病気を治していきます。 ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。 このときの身体の状態や体質をあらわすのが(しょう)(constitution)という概念です。 この考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。 中医学(漢方)の良さは、薬そのものよりも、証にもとづき人を診るという、その考え方にあります。  
  次の症状のいくつかある方は、本方剤が良く効く可能性が大きいです。 当帰芍薬散 朱雀:四神の獣・南方の守護神  
区切り
  【八法】…和法:和解あるいは調和の作用によって病邪を消除する治法です。  
  【中薬大分類】理血剤…血の運行を調節する方剤です。理血薬を主体にして血分を調理し、血分の病変を改善する方剤です。
【中薬中分類】活血化瘀剤…滞った血(瘀血)を流す方剤です。蓄血・血瘀による疼痛・腫脹・腫瘤・半身不随・月経痛・無月経あるいは産後の悪露停滞・化膿症初期・狂躁などのさまざまな病変に使用します。  
  八綱分類裏寒虚(りかんきょ) 裏 寒 寒 虚 …証(体質・症状)が、裏証(慢性症状)、寒証(冷え)、虚証(虚弱)、湿症(水分停滞)、血虚(血流不足・貧血症状)の方に適応します。

 
  【気血津液】…人体の生命を支える要素として、氣(qi)・血(blood)・津液(body fluid)の3つがあります。
血虚…血が不足している方が使用します。血の濡養(栄養・滋潤)作用の不足による症候で、広義での栄養不良状態に相当します。 皮膚につやがない、爪の色が悪い、頭のふらつき、目がかすむ、しびれ感などの症状を呈します。
水液停滞…余分な水があまっている方が使用します。津液の停滞のことで、西洋医学的には細胞内液・組織液・リンパ液などが、主として組織間・消化管内・体腔内に異常に停滞したことを意味します。 中医学では湿・痰飲・水腫と呼ぶのが一般的で、日本では水毒ともいわれます。
 
 
  【証(病機)】肝鬱血虚兼湿痰(かんうつけつきょけんしつたん)  
  女性  男性 女性の使用が多い方剤です。
 
  【中医学効能(治法)】 補血温血・健脾利水・調経止痛  
  【用語の説明】(term)
補血(ほけつ) »…血を補うことです。=益血、養血。
健脾(けんぴ) »…脾の働きです。脾胃の機能を正常にする治療法です。
利水(りすい) »…利水;腎を温めて、脾を健全にすることです。尿や発汗のことです。
調経(ちょうけい) »…月経を調節することです。
止痛(しつう) »…痛みを止めることです。
肝鬱(かんうつ) »…肝の機能鬱滞です。気分の落ち込んだ状態、神経症、ヒステリー、憂鬱などです。
血虚(けっきょ) »…体を栄養する血が不足した状態です。貧血などで栄養成分が不足した状態です。顔色不良、口舌が淡白、爪・毛髪につやがない、ふらつき、視力減退などがあります。
 
区切り
  【出典】 (source)出典書籍
西暦250年 三国時代 『金匱要略』 校訂 →処方使用期間:1758年間  
  中医師 【備 考】 (remarks)
微妙な使い分けが必要な女性の漢方薬
婦人科疾患には、定番として用いられる処方がたくさんあります。当帰芍薬散のほかには、桂枝茯苓丸や加味逍遙散、桃核承気湯などがよく知られています。これらはいずれも、駆瘀血剤に分類される漢方薬です。ここで、これらの用法の違いをおおまかに見ておきましょう。
まず、適応となる体力程度が弱い順に並べると、当帰芍薬散(虚証)、加味逍遙散(中間証)、桂枝茯苓丸(中間証〜実証)、桃核承気湯(実証)という順になります。
・当帰芍薬散は、冷えを伴う瘀血を取る「安産の薬」で、むくみや尿の出の異常といった水毒を伴う症状に効き、月経痛などの鎮痛にも用います。
・加味逍遙散は、更年期障害の第1選択薬として用いられることが多い薬です。
・桂枝茯苓丸は血と気の薬であり、のぼせなど気の上衝を伴うケースによく効きます。
・桃核承気湯は、のぼせて便秘がちな体力の充実したタイプに合う薬です。
しかし、女性の体はデリケートで、処方が額面通りに合わない場合も往々にしてあります。瘀血に最も広く使われる薬は桂枝茯苓丸と当帰芍薬散ですが、専門家でも使い分けに迷うケースがよく見られます。証を見定めて桂枝茯苓丸を選んでも効かなかったという人が当帰芍薬散でよくなることも、またその逆のケースもあるのです。つまり、実際の治療では柔軟に処方を見直すことも必要なのです。
 
  安産の薬安産の薬として有名な処方
昔から「血の道」という言葉があるように、日本では、女性特有の病を血の巡りの異常ととらえてきました。実際、多くの婦人科疾患は、漢方でいう血の異常(瘀血)と深い関係があります。そのため、女性の病気の漢方治療では、瘀血を取り除く「駆瘀血剤」がとても重要な位置を占めるのです。女性によく用いられる漢方薬を列挙すると、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸など、有名な駆瘀血剤がほとんど含まれています。
血の道、または血の道症という言葉が指す範囲は非常に幅広く、月経、妊娠、出産(または流産)、閉経などに伴って起こる不定愁訴がほとんど含まれています。当帰芍薬散は、その治療薬の中でも最も頻繁に用いられる薬で、漢方の初歩では、「妊娠している女性には当帰芍薬散を試せ」といわれるほどです。
当帰芍薬散は、体力の低下している虚証タイプの人に合う処方です。また、瘀血を取り除く作用も比較的マイルドなため、流産などの副作用を招く恐れが非常に小さいのです。逆に、この薬は胎児を安定させる「安産の薬」として用いられてきた実績があります。妊娠している女性で、体が冷えて体力がない、あるいは悪阻(つわり)がひどい、流産が続いているという場合には、当帰芍薬散が向いています。
もちろん妊娠中に限らず、若い女性の月経不順や月経困難症、閉経後の女性の更年期障害にも有効です。
瘀血と水毒が合併した証に合う
当帰芍薬散の処方は、『金匱要略』(きんきようりゃく)という書物に記載されています。この処方を構成する生薬を見ると、当帰、川芎、芍薬には瘀血に伴う冷えや痛みを解消する作用が、茯苓、朮、沢瀉には水毒を解消する作用があります。
そこで、瘀血に水毒が合わさり、冷え、痛みを伴うような症状が、当帰芍薬散の適応となります。女性に多く見られるむくみ、冷え、月経痛といった症状が守備範囲になることから、女性の薬として非常に幅広く使えるのが当帰芍薬散の特長です。
もちろん、証が合いさえずれば、男性の病気に用いても有効です。夜更かしで朝食を食べず低血圧気味、日中に無気力といった、昨今よく見られる若者にも処方されます。また、ネズミを使った実験の結果、老人性痴呆の予防につながるのではないかと注目されている漢方薬でもあります。
この薬が合うタイプは、筋肉質でなく、顔色が悪い、冷え症で貧血気味、肩こりやめまいによく悩まされるといった人です。腹部は軟弱ですが、臍(へそ)の左側から下腹部にかけて押すと、抵抗、圧痛があることも目安になります。
 
  当帰の作用 左の写真は当帰の花です。
当帰の作用は次の通りです。
補血作用血の機能を高め、身体の栄養分を補います。
行血作用…子宮を収縮して、瘀血(流れの滞った状態の血液)を排出したり、子宮の痙攣を抑えます。
潤腸作用腸内の水分不足を改善し、便秘に効果を発揮します。
調経作用…月経を調節します。
鎮静作用気持ちを静める作用です。
 
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  【治療の特徴】
中医学(漢方)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb)を処方した漢方薬を使う」ことです。
生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス(balance)良く循環することが大切だと考えます。
人間の健康は、これら「気」(陽)と「血・津液」(陰)の調和のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。  

中薬(成分生薬)中薬(成分生薬)の解説

 
当帰芍薬散の中薬一覧(herb list)
生薬名(herb name) 薬量(quantity) 君臣佐使(role) 効能1 効能2 効能3 効能4 大分類 中分類
沢瀉 » 4 利水止瀉・消腫 清熱 利水滲湿薬
白朮 » 4 利水止瀉・消腫 健脾 補虚薬 補気薬
茯苓 » 4 利水止瀉・消腫 健脾 利水滲湿薬
芍薬 » 6 補血 止痙・止痛・調経 補虚薬 補血薬
当帰 » 3 補血 活血 止痙・止痛・調経 散寒(通陽) 補虚薬 補血薬
川芎 » 3 活血 止痙・止痛・調経 散寒(通陽) 活血化瘀薬(理血薬)
君薬…方剤配合中の主薬で、症状に対して主に作用する薬物です。
臣薬…主薬を補助して主薬の効き目を強化する薬物です。
佐薬…主薬に協力して二次的な症状を取り除くか、または主薬を制御し、主薬による副作用を抑えるか防ぐ薬物です。
使薬…方剤の中では二次的な薬物か、引経(薬物を病のある場所まで引率していく作用)の薬物です。
 
 
●方 解
本方為婦科及胎?疾病常用方劑,適用於肝?血凝,脾?濕滯之證。但不局限於婦人、男性亦可使用。 方中當歸、白芍養血柔肝;川?活血化?;白朮健脾燥濕安胎;茯苓、澤瀉滲濕利水。諸藥合用共奏養血柔肝、活血化?,健脾利濕之功。
 

病症・腹診・舌診・脈診病症・腹診・舌診・脈診について

  病症は、この症状に当てはまることがあれば、効く可能性が大きいです。 症例・治例は、クリックして具体的な例をお読み下さい。 腹診は、お腹の切診です。日本漢方でよく使用されます。 舌診は、舌の状態の望診です。証の判定の有効な手段です。 脈診は脈の切診です。脈の速さは、確実に判定できますが、それ以外は難しい技術です。 各説明ボタンをクリックしてお読みください。 ●処方名:当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)比較情報
 
 
【病症】(symptoms) 次の病症どれかのある方に本処方は適合します。 ●貧血、冷え症、動悸、立ちくらみ、頭重、倦怠感があり、頻尿、下半身の冷え。
●やせ型色白、筋肉は弛緩(しかん)気味です。
●下腹部痛(温めたり、さすったりすると軽くなる、虚痛)。
●月経不順(遅れ気味)。
●月経痛(月経中から後に痛む)。
●全身倦怠感、内気、無気力、動作緩慢、目声に力がない。
●精神不安、不眠、いらいら。
●肩こり、耳鳴り、腰痛。
●浮腫。
●流産癖、白帯下。
足跡【当帰芍薬散】の症例・治例 »
腹診【腹診】(abdomen) 腹壁は軟弱、皮膚は水っぽくたるんでいます。お臍(へそ)の左側から下腹部に軽い圧痛、抵抗があり、指で深く圧すと痛みが心窩部、腰部に放散する(臍傍拘攣(さいぼうこうれん))。胃部振水音(胃内停水)があります。
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舌診【舌診】(tongue) 湿潤淡白で無苔あるいは薄い白苔です。
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脈診【脈診】(pulse) 沈弱細です。
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  【合方】(複数の漢方薬を合わせた処方)
他剤との効用併用を示します。合方は良効なケースが多いです。
本方の証の方で、さらに次の症状がある方は、合わせて次の方剤を飲むと良く効きます。
病症症状 合方 備考
冷え、寒気の強い場合 当帰芍薬散+附子 »
妊娠時の不定愁訴や風邪の場合 当帰芍薬散+香蘇散 »
柴蘇和気飲
 

  【中国藥方加減】(Dialectic)
1.腎?腰?:加熟地、杜仲、桑寄生。 2.脾?、納少便溏:加黨參、山藥、白扁豆。 3.血?眩暈:加熟地、丹參、赤芍。 4.肝鬱氣滯:加柴胡、香附。 5.血熱:加牡丹皮、生地、梔子。 6.??腹痛或K斑:合桂枝茯苓丸。 7.煩躁口?:加?連、??。 8.?色帶下:加山藥、?柏、車前子。 9.前列腺炎:合導赤散。  
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