処方名竜胆瀉肝湯処方名

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  主治(Mainly treatment)
肝経湿熱(急性結膜炎・中耳炎・高血圧・陰部掻痒)/肝経湿熱・実火治療の代表方剤/肝火上炎・肝胆湿熱  
  【中国主治】(Chinese Mainly treatment)
一、肝膽實火上炎証。脇痛頭痛、目赤口苦,耳聾耳腫。 二、肝經濕熱下注証。小便淋濁、陰癢陰腫、婦女帶下、舌紅、苔?、脈數。  
  【適応症】尿路系炎症(腎盂炎、膀胱炎、尿道炎)、排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ、膀胱カタル、膣炎、陰部湿疹、子宮内膜炎、陰部痒痛、バルトリン腺炎、陰部掻痒症、睾丸炎、外陰潰瘍、トリコモナス、ベーチェット病、ソケイリンパ腺炎、肝硬変  
  【中国臨床應用】(Mainly treatment)
急性肝炎、急性膽?炎、帶?疱疹、急性盆腔炎、乳腺炎、急性?丸炎、急性腎盂炎、泌尿系感染、急性結膜炎、角膜炎、中耳炎、鼻竇炎、陰道炎。  
 
中医師 漢方・中医学(Traditional Chinese Medicine)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb) »を処方した漢方薬を使う」ことです。
生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液(blood)」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス良く循環することが大切だと考えます。
人間の健康は、これら「気」(陽)「血・津液」(陰)の調和(harmony)のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和(陰平陽秘)していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。
黄帝:三皇五帝時代。夏王朝の始祖。宮廷医師、岐伯との問答形式で記された古典的医学書「内経 »素問」の著者です。日本ではユンケル「ユンケル黄帝液」などと商品名に利用されています。
 
  弁証論治 ●膀胱や性器の湿熱 »
●皮膚病と湿熱 »
●出血・実熱 »
●肝火上炎(肝火旺) »
●肝胆湿熱 »
●肝胃不和(肝火犯胃) »
 
  【中国辨證】(Dialectic)
1)肝膽實火上炎以口苦目赤、頭暈耳鳴為主症。 (2)濕熱下注以口苦尿?、前陰濕癢或帶下?臭,脈弦數為主症。  
区切り
  薬は効果(ベネフィット)のみだけでなく副作用(リスク)の可能性もあります。リスクをなるべく抑え、ベネフィットを最大限に引き出すことが大切なのです。薬を使用される方の理解と協力が大いに必要です。
【副作用】(ill effects)
証が合わなかった場合は、構成生薬の地黄、黄ゴン、竜胆の影響により、食欲不振、胃の不快感、吐き気、下痢などが起こることがあります。  
  【注 意】(Remark) ×残念ながら、冷えの強い「寒証」、体の虚弱な「虚証」の方、胃腸が弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい方は、禁忌(きんき)(服用を避ける)です。
 
  【妊娠・授乳の注意】女性 ●妊婦または妊娠の可能性のある人は、使用できない場合があります。
 
 
区切り
  証の判定 判定

証(症状・体質)判定を望む方判定の方右矢印 陰陽(太極図)証の判定メニュー画面へ »
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中医学の証の解説中医学の証の解説

  中医学(漢方)の治療目的は病邪を取り除き、病因を消し去り、陰陽陰陽(positive and negative principles)のバランス(balance)の乱れを正し、相関する臓腑の生理機能を調和・回復させることです。 中医師 中医学(漢方)の特徴は、身体全体を診るということです。 身体全体の調子(バランス)を整え、病気を治していきます。 ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。 このときの身体の状態や体質をあらわすのが(しょう)(constitution)という概念です。 この考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。 中医学(漢方)の良さは、薬そのものよりも、証にもとづき人を診るという、その考え方にあります。  
  次の症状のいくつかある方は、本方剤が良く効く可能性が大きいです。 竜胆瀉肝湯 朱雀:四神の獣・南方の守護神  
 
【使用目標】
本方剤の適応する使用目標は次のとおりです。
●丈夫な体質で、冷えはなく、脈にもおなかにも力がある。
●下腹部の筋肉が緊張し、臓器や陰部に熱感があって、充血、落痛、腫脹がある。
●排尿時に痛みがある。
●排尿困難でタラタラと尿が出る。
●残尿感がある、または頻尿である。
●帯下(おりもの)がある。
 
区切り
  【八法】…清法:熱邪を清解することにより裏熱を消除する治法です。  
  【中薬大分類】清熱剤…熱を除去する方剤です。清熱・瀉火・解毒・透熱滋陰などの効能により裏熱を改善する方剤です。
【中薬中分類】清臓脇熱剤…臓腑の熱を除去する方剤です。  
  八綱分類裏熱実(りねつじつ) 裏 熱 熱 実 …証(体質・症状)が、裏証(慢性症状)、熱証(炎症)、実証(体力充実)の方に適応します。

 
  【気血津液】…人体の生命を支える要素として、氣(qi)・血(blood)・津液(body fluid)の3つがあります。
水液停滞…余分な水があまっている方が使用します。津液の停滞のことで、西洋医学的には細胞内液・組織液・リンパ液などが、主として組織間・消化管内・体腔内に異常に停滞したことを意味します。 中医学では湿・痰飲・水腫と呼ぶのが一般的で、日本では水毒ともいわれます。
 
 
  【気血津・臓腑証】
湿熱(しつねつ)…清熱化湿と清熱利水の薬物を主体にして、消炎・抗菌・産出の抑制・解熱・鎮静および利胆・利尿・止血の作用をもって、湿熱に適しています。また、地黄・当帰などの滋潤性の薬物の配合があって「燥しすぎない」利点もあり、やや慢性に経過して血虚・陰虚の側面があらわれた状態にも使用可能です。
一般には、肝臓・胆のう・胃腸・尿路系・骨盤内・生殖器などの滲出を伴う炎症に用います。
 
  【証(病機)】肝胆湿熱下注(かんたんしつねつかちゅう)  
  女性  男性 女性の使用が多い方剤です。
 
  【中医学効能(治法)】 清肝瀉火・清熱化湿・利水・疏肝  
  【用語の説明】(term)
清肝(せいかん) »…肝の機能亢進状態を改善することです。
瀉火(しゃか) »…熱の過剰な状態を改善することです。
清熱化湿法(せいねつけしつほう) »…寒涼性の生薬を用い、湿や熱邪、発熱・嘔吐・下痢・尿不利・腹脹を治します。
利水(りすい) »…利水;腎を温めて、脾を健全にすることです。尿や発汗のことです。
湿熱(しつねつ) »…体の余分な水分が熱を帯びた状態のことです。湿邪+熱邪が発病因子となったものです。
 
区切り
  【出典】 (source)出典書籍
西暦1742年 清時代 『医宗金鑑』 呉謙 →処方使用期間:266年間  
  中医師 【備 考】 (remarks)
竜胆瀉肝湯は、中国の金・元の時代に、補中益気湯をつくったとされる季東垣(りとうえん)の『蘭室秘蔵』(らんしつひぞう)を原典としています。ところが、時代の移り変わりとともに、効果は似ていても構成生薬が異なる同名処方がいくつもつくられました。現在、主に用いられているのは、明時代の名医・薛立斎(せつりつさい)がつくったとされる、『薛氏医案二十四種』に掲載の処方で、「竜苓当沢、梔車地に通じて甘し」などと語呂合わせで覚えられているぐらいです。
 
  肝・腎・胆9つの生薬は肝・腎・胆の機能を改善
少量でありながら主薬となっている竜胆は、苦味健胃薬としてだけではなく、肝臓と胆嚢の消炎・解毒剤としても使われます。特に肝臓は、解毒・分解を担う臓器であるため、竜胆の作用によって機能が強まるとされています。また、腎臓を含む泌尿器・生殖器系の炎症を取り、水分がたまって流れが滞った状態を改善する利湿作用も期待できます。
構成生薬の黄ゴンと山梔子には、ともに消炎・解熱作用があります。当帰と地黄は主に血とかかわり、血に潤い(栄養)を与え、肝臓や腎臓を丈夫にし、木通と沢瀉は主に水とかかわり、尿道や膀胱など、下腹部の水毒と炎症を取り去ります。さらに車前子には、利尿・抗炎症作用があり、下腹部の患部の充血を流して消炎します。これらの生薬が甘草の働きで程良く調和され、体内 で効き目を発揮するのです。
病にかかりにくい体をつくる
『万病回春』(まんびょうかいしゅん)には、竜胆瀉肝湯の目標として「肝臓系統の経絡(気・血の流れる道)の湿熱(湿邪と熱邪が合わさって引き起こされる病気)、あるいは副睾丸炎(子どもができなくなる炎症)、便毒(鼠蹟(そけい)リンパ腺炎)、下疳(げかん)(性器にできる伝染病潰瘍)、会陰部(肛門と陰部の間)の腫れものが焼けつくように熱をもってうずく、尿が出にくい、女性の外陰部の炎症でかゆみや痛みがある、男性器の亀頭部が腫れる、または膿の出てきたものを治す」とあります。つまり、泌尿器系や生殖器系の炎症、充血や腫脹、疼痛を伴った鼠残部のリンパ腺、排尿異常などを目標に用いられるというわけです。
竜胆瀉肝湯は、血液の流れにも深くかかわりながら病を治していきます。「肝臓系統の経絡」という表現からも分かるように、腹部の静脈は、門脈(肝門脈)を通って解毒・分解を担う肝臓に入ることから、下腹部での炎症や化膿による熱毒は血液によって肝臓に運ばれて解毒されるわけです。そして、肝臓の解毒作用が弱ければ病は治りにくいということになります。竜胆瀉肝湯は、肝臓の働きを強化し、たとえ抗生物質がなくても病毒を退治して、その上、病にかかりにくい体をつくっていくのです。
 
  湿熱竜胆瀉肝湯は肝経湿熱の改善を目的とする
竜胆瀉肝湯の目的は、まず肝経湿熱の改善にあります。分かりやすくいえば、肝臓系統の気と血の流れる道で起こる、排尿困難に伴う炎症・発熱を改善することです。
漢方の名医・浅田宗伯の『勿誤薬室方函口訣』(ぶつごやくしつほうかんくけつ)には「湿熱の治療には3つの処方があり、湿熱の上に頭痛がひどく、あるいは目が赤く、耳鳴りがする場合は、小柴胡湯に竜胆と胡黄連(ゴマノハグサ科コオウレンの根茎)を加えるとよい。もし湿熱が表面に出て、陰部に潰瘍性のできものがある場合は、梅毒の慢性化症状に効く九味柴胡湯がよい。もし病毒が下部に流れて横根、毒淋(淋病)、陰触瘡(いんしょくそう)(下疳瘡(げかんそう)の一種)がある場合は、竜胆瀉肝湯が主になる」と書かれています。
 
  当帰の作用 左の写真は当帰の花です。
当帰の作用は次の通りです。
補血作用血の機能を高め、身体の栄養分を補います。
行血作用…子宮を収縮して、瘀血(流れの滞った状態の血液)を排出したり、子宮の痙攣を抑えます。
潤腸作用腸内の水分不足を改善し、便秘に効果を発揮します。
調経作用…月経を調節します。
鎮静作用気持ちを静める作用です。
 
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  【治療の特徴】
中医学(漢方)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb)を処方した漢方薬を使う」ことです。
生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス(balance)良く循環することが大切だと考えます。
人間の健康は、これら「気」(陽)と「血・津液」(陰)の調和のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。  
  【中薬構成】(herb composition)
神農

竜胆・黄苓・楯子は漢方で潟火薬と言われるもので、炎症をおさめる作用が強く、そのほかの生薬も大部分寒性薬で、この方剤が熱証向きの方剤だということがわかる。また車前子・沢潟・木通という利尿薬を中心に、方剤は湿証向きに構成されており、炎症によって尿が出渋るのを快通させる方剤と見ることができる。当帰・地黄は下腹部の血液循環を促す働きをするものと考えられる。
方剤全体としてやや発散性があるので、陰部の炎症や痒痛にも効果がある。また、上部(眼・耳など)の充血を下げ、湿を除くということを目標に、高血圧症・緑内障・中耳炎にも用いられる。

神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。  

 
●方 解
本方清肝利濕之力甚強,凡屬肝膽實火上炎或濕熱下注所致之証,津液未傷,體力充足者、均可用此方苦寒直折。方中龍膽草大苦大寒,上瀉肝膽實火,下清下焦濕熱,除濕瀉火兩擅其長;??、梔子苦寒瀉火,助龍膽草瀉肝膽經濕熱,並用澤瀉、木通、車前子、清利濕熱,使肝膽濕熱從小便出;生地、當歸滋養肝血、並防苦寒藥耗傷陰血;柴胡疏暢肝膽之氣,並作為引經藥,甘草調和諸藥。諸藥合用、瀉中有補,疏中有養、使邪去而不傷正。
 

病症・腹診・舌診・脈診病症・腹診・舌診・脈診について

  病症は、この症状に当てはまることがあれば、効く可能性が大きいです。 症例・治例は、クリックして具体的な例をお読み下さい。 腹診は、お腹の切診です。日本漢方でよく使用されます。 舌診は、舌の状態の望診です。証の判定の有効な手段です。 脈診は脈の切診です。脈の速さは、確実に判定できますが、それ以外は難しい技術です。 各説明ボタンをクリックしてお読みください。 ●処方名:竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)比較情報
 
 
【病症】(symptoms) 次の病症どれかのある方に本処方は適合します。 ●体力が割合にある。
●泌尿器生殖器の疾患がある。
●精神不安。
●帯下、膿尿。
●ソケイ部リンパ腺腫張。
●皮膚浅黒く足底、手掌に汗をかく。
●足に乾性の皮膚病が出やすい。
足跡【竜胆瀉肝湯】の症例・治例 »
腹診【腹診】(abdomen) 腹壁は全体に力があり、腹直筋拘彎(特に右側)、両腹直筋の外側に緊張と過敏帯があります。
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舌診【舌診】(tongue) 乾燥し、辺縁紅紫、黄膩苔です。
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脈診【脈診】(pulse) 弦数、あるいは沈滑です。
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  【合方】(複数の漢方薬を合わせた処方)
他剤との効用併用を示します。合方は良効なケースが多いです。
本方の証の方で、さらに次の症状がある方は、合わせて次の方剤を飲むと良く効きます。
病症症状 合方 備考
管腔臓器の炎症で平滑筋痙攣(けいれん)による疼痛を伴う場合 竜胆瀉肝湯+四逆散 »
竜胆瀉肝湯+芍薬甘草湯 »
血瘀を伴う場合 竜胆瀉肝湯+桂枝茯苓丸 »
竜胆瀉肝湯+桃核承気湯 »
竜胆瀉肝湯+通導散 »
慢性化したり血虚・陰虚が明らかな場合 竜胆瀉肝湯+四物湯 »
竜胆瀉肝湯+六味丸 »
 

  【中国藥方加減】(Dialectic)
1.頭痛眩暈:加菊花、天麻。 2.咯血衄血:加牡丹皮、側柏葉。 3.帶下?臭:加?柏、?苡仁、椿根皮。 4.大便秘結:加大?、芒硝。 5.肝腫?疸:加茵陳、茯苓、川七。 6.急性青光眼:加玄參、羌活。 7.目赤腫痛:加川?、菊花。 8.泌尿系感梁:加?蓄、瞿麥、白茅根、連翹。  
区切り